PythonistaのためのJulia100問100答
この記事はJulia Advent Calendar 2014の12日目の記事だったはずのものです(遅れてすいません...)。 Pythonユーザーとしての自分に対して100問100答形式で気になるだろうことを列挙したものになっています。
全体は以下の様なセクションに分かれています。
Juliaのバージョンはv0.3系を基本としていますが、開発中のv0.4の内容も必要に応じてコメントしています。
Julia
Juliaってどういう言語なの?
Juliaは高レベルでハイパフォーマンスな技術計算のための動的言語だよ。 構文はPythonユーザーならすぐに理解できるよ。
公式ウェブページはここ: http://julialang.org/
誰が作ってるの?
主にMITの人達が中心になって作ってる言語だよ。 特にJeff Bezansonという人が創始者のひとりで、一番コミットしてる人だよ。
ライセンスはどうなってるの?
Juliaの処理系自体はMIT Licenseだよ。 外部のライブラリや一部のソースコードに一部他のライセンスが適用されているよ。 詳しくはLICENSE.mdを見てね。
Juliaって速いの?
とっても速いよ!
ここで他の言語との比較ベンチマークが見られるからのぞいてみてごらん。 CやFortranのような言語と比べても決して遜色ないし、きっと動的型付け言語としては最速クラスだと思うよ!
何で速いの?
LLVMベースのJITコンパイラを搭載してるからだよ。 C言語みたいにビルドとか要らないし、インタープリタをつかうPythonと同じ感覚で簡単に動かせるよ。
PythonにもCythonとかあるけど?
「いやCythonとか面倒やろ、ていうかね、なんで別の言語使わないとあかんねんと。一つの言語でパフォーマンスが要求されるコアの部分からインターフェースまで書く、そういう考え方もできると思うんですよ。だって考えてみてくださいよ、ブラジルの選手Cython書かないでしょ。」
PyPyもあるけど?
最適化の仕方が多分かなり違うから、コードによってはJuliaのほうがずっと速かったりするよ。
Numbaもあるよね?
そうだね!
速度比較できるコード例はある?
大分極端な差が出るパフォーマンス比較だと、Nクイーン問題を解いた以下の例があるよ。
N | Julia v0.4.0dev | CPython 2.7.8 | PyPy 2.4.0 |
---|---|---|---|
11 | 0.0285 | 2.34 | 0.99 |
12 | 0.164 | 13.9 | 4.80 |
13 | 1.02 | - | 29.47 |
(単位は秒, 2.6GHz Intel Core i5, Mac OS X 10.9.5)
なお、測定にはJuliaは@time
マクロ、CPythonはIPythonのtimeit
、PyPyはtimeit
が正しく動かないのでrun -t
でスクリプトを実行してWall timeを計測したよ。
PyPyには少し不利な測定方法だけど、それでもJuliaがすごく速いね!
function solve(n::Int) places = zeros(Int, n) search(places, 1, n) end function search(places, i, n) if i == n + 1 return 1 end s = 0 @inbounds for j in 1:n if isok(places, i, j) places[i] = j s += search(places, i + 1, n) end end s end function isok(places, i, j) qi = 1 @inbounds for qj in places if qi == i break elseif qj == j || abs(qi - i) == abs(qj - j) return false end qi += 1 end true end
def solve(n): places = [-1] * n return search(places, 0, n) def search(places, i, n): if i == n: return 1 s = 0 for j in range(n): if isok(places, i, j): places[i] = j s += search(places, i + 1, n) return s def isok(places, i, j): for qi, qj in enumerate(places): if qi == i: break elif qj == j or abs(qi - i) == abs(qj - j): return False return True
環境
Juliaのレポジトリはどこ?
GitHubにホスティングされてるよ: https://github.com/JuliaLang/julia
インストールはJulia環境構築 2014 ver. #julialangを参考にしてね。
IPythonみたいなのはあるの?
コンソールではJuliaのREPLはわりと強力だよ。
julia
コマンドでREPLを立ち上げて、?
と入力すると関数のドキュメントも参照できるし、;
と入力するとシェルコマンドも実行できるすぐれものだよ!
タブ補完もあるし、Bashのような履歴機能もあるし、色も着くし、さらに全てJulia自身で実装されているんだよ!
あとIPython Notebookを使えるIJuliaというのもあるよ。
それにJupyterプロジェクトのJuはJuliaのJuだよ。
EmacsとかVimのサポートはあるの?
Emacsはjulia-mode.elが本体で開発されているよ。 Vimはjulia-vimというプラグインがあるよ。
あとはLightTable用のJunoとか、Sublime Textのためのパッケージもあるよ。
PyPIみたいなパッケージのレポジトリはあるの?
パッケージの管理はJuliaの機能にそもそも組み込まれているよ。 パッケージはhttp://pkg.julialang.org/で探せるよ。 このパッケージ管理はMETADATA.jlというメタパッケージを通して行われてるんだ。
どうやってパッケージをインストールするの?
JuliaのREPLを立ち上げてPkg.add("PackageName")
などとするとMETADATA.jlに登録されているパッケージはインストールできるよ。
他にはシェルから直接
julia -e 'Pkg.add("PackageName")'
としてもOKだよ。
METADATA.jlにはないけどGitHubなどにホスティングされているGitレポジトリなら、Pkg.add
の代わりにPkg.clone
にGitレポジトリのURLを渡すとインストールできるよ。
PEP8みたいなスタイルの規範はあるの?
きっちりこれに従わなければ村八分というのはないけど、ゆるい慣習としてドキュメントに記載されているのは、
- 変数名は小文字
- 単語の境界はアンダースコア(
_
)。でもなるべく使用は避ける。 - 型名は大文字で始まり、CamelCase
- 関数名やマクロ名は小文字でアンダースコアなし。
- 引数を破壊的に変更する関数は
!
をつける(sort!
など)。
だよ。
他に標準ライブラリを読むと、
- スペース4つでインデント
- オペレータの左右にはスペース(✖:
x+y
, ✔:x + y
) - ただし配列のインデックスではスペースを空けない(
1:n-3
など)
といったルールに従ってるっぽいかな。
う〜んPythonを呼び出したいなぁ...
実はPyCall.jlなんていうPythonを呼び出せるライブラリもあるよ。 かなりちゃんと動くよ!
今度はC++を...
まだ若いけどCxx.jlがかなり期待できそうだよ。 他にはC++をCでラップして呼び出す方法もあるよ。
データ
True
とFalse
は?
小文字化したtrue
とfalse
があるよ。
数値は?
基本Pythonと同じように42
と書くと整数、42.0
とかくと浮動小数点数になるよ。
None
は?
nothing
がそれに当たるよ。
演算子はどんな感じ?
+
, -
, *
はPythonと同じ感じ。でも/
はPython2でなくPython3と同じように整数 / 整数
が浮動小数点数になるので気をつけてね。
julia> 10 / 2 5.0 julia> 3 / 2 1.5
Python2の/
に当たるのはJuliaではdiv
関数だよ。
julia> div(10, 2) 5 julia> div(3, 2) 1
and
やor
は?
JuliaではC言語と同様に&&
や||
を使うよ。
Pythonのlist
やdict
にあたるのは何?
Pythonのlist
はJuliaのVector{T}
型に、dict
はDict{K,V}
型が対応してるよ。
そのVector{T}
のT
とかDict{K,V}
のK
とかV
とかは何?
型パラメータ(type parameter)だよ。Vector{T}
ならそのベクターはT
型の要素を持っていて、Dict{K,V}
はK
型が辞書のキーでV
が値の型だよ。
例えばVector{Int64}
なら(符号付き)64bitの整数が要素のベクターだし、Dict{ASCIIString,Bool}
ならASCII文字列がキーでブール値が値の辞書だよ。
type
関数みたいにある値の型の確認するのはどうするの?
typeof
関数を使おう。
julia> typeof(1) Int64 julia> typeof(1.0) Float64 julia> typeof([1,2,3]) Array{Int64,1} julia> typeof("foobar") ASCIIString (constructor with 2 methods) julia> typeof("漢字とか") UTF8String (constructor with 2 methods)
Vector
のインデックス0
の要素にアクセスしようとしたらエラーがでたんだけど!?
そうそう、Juliaではインデックスは1
始まりだよ。
xrange
はあるの?
範囲型ももちろんあるよ!例えばPythonのxrange(0, 10)
はJuliaだと0:9
と書くよ。
Pythonと違って範囲の右端が含まれることに注意してね!
dict
は?
Dict{K,V}
という型があるよ。K
がキーの型でV
が値の型だよ。
julia> d = Dict{ASCIIString,Int}() Dict{ASCIIString,Int64} with 0 entries julia> d["foo"] = 100 100 julia> d["bar"] = 200 200 julia> d["bar"] 200 julia> haskey(d, "foo") true julia> haskey(d, "baz") false
tuple
は?
あるよあるよ!Pythonと同じようにコンマ(,
)をつかって作れるよ!
julia> 1, 1.0, "one" (1,1.0,"one") julia> (1, 1.0, "one") (1,1.0,"one")
Pythonのタプルとの違いはタプルはその要素によって型が別々なところかな。
julia> typeof((1, 1.0, "one")) (Int64,Float64,ASCIIString) julia> typeof((1, "壱")) (Int64,UTF8String)
関数も引数として渡したりできるの?
もちろん! Juliaでは関数もFunction
という型のオブジェクトだよ。
lambda
式みたいな無名関数は?
->
という矢印を使うと作れるよ。
julia> x -> x * 10 (anonymous function) julia> map(x -> x * 10, [1,2,3]) 3-element Array{Int64,1}: 10 20 30 julia> typeof(x -> x * 10) Function
日付・時刻を表すdatetime
みたいなのは?
v0.4からDateTime
型が入るよ!
http://julia.readthedocs.org/en/latest/stdlib/dates/
もっとPythonの型との対応関係を教えて!
はいよ!
ちなみにPython2系を基準にしてるよ。
Python | Julia | 備考 |
---|---|---|
NoneType | Nothing | v0.4からはVoid |
bool | Bool | |
int | Int | IntがInt32かInt64かは環境依存 |
float | Float64 | |
str | ASCIIString | |
unicode | UnicodeString | |
dict | Dict{K,V} | |
list | Vector{T} | |
bytearray | Vector{Uint8} | v0.4からは Vector{UInt8} |
tuple | (T1,), (T1,T2), (T1,T2,T3), ... | |
set | Set{T} / IntSet | |
xrange | UnitRange{T} / StepRange{T,S} | 浮動小数点数などの範囲型もある |
datetime | DateTime | v0.4から |
module | Module | |
type | DataType | |
Exception | Exception | 抽象型 |
技術計算
NumPyとかSciPyみたいなのが使いたいんだけど?
Juliaは技術計算のための言語を目的としてるから、標準ライブラリとして多くが組み込まれているよ。
NumPyのndarray
はどれ?
Array{T,N}
という多次元配列があるよ。
実はさっきのVector{T}
はArray{T,1}
という1次元配列のエイリアスだよ。
NumPyみたいなベクトル化の計算もできるの?
もちろん!
+
はArray
に対しても定義されてるからね。
要素ごとの加算であることを明確にするため.+
という演算子もあるよ。
julia> x = [1,2,3] 3-element Array{Int64,1}: 1 2 3 julia> y = [4,5,6] 3-element Array{Int64,1}: 4 5 6 julia> x + y 3-element Array{Int64,1}: 5 7 9 julia> x .+ y 3-element Array{Int64,1}: 5 7 9
空の配列をつくるときは?
Array
型のコンストラクタを呼ぶと目的の型の配列を作ってくれるよ。
呼び出し方はArray(<型名>, <サイズのタプル>)
だよ。
初期化されてないこともあるから注意してね。
julia> Array(Int, (2, 3)) 2x3 Array{Int64,2}: 140339717649152 140339717659744 140339700672608 140339719760256 140339700672608 0 julia> Array(Int, (2, 3, 4)) 2x3x4 Array{Int64,3}: [:, :, 1] = 0 0 0 0 0 0 [:, :, 2] = 0 0 0 0 0 0 [:, :, 3] = 0 0 0 0 0 0 [:, :, 4] = 0 0 0 0 0 0 julia> Array(Float64, (10, 10)) 10x10 Array{Float64,2}: 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
配列の初期化をしたいんだけど?
fill!
を使ってね。
!
がついてる関数は破壊的なので元の配列に直接書き込むよ。
julia> x = Array(Float64, (3, 3)) 3x3 Array{Float64,2}: 6.95286e-310 6.95285e-310 0.0 6.95285e-310 0.0 0.0 6.95286e-310 0.0 0.0 julia> fill!(x, 0.5) 3x3 Array{Float64,2}: 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 julia> x 3x3 Array{Float64,2}: 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5
非破壊版のfill
もあるよ。
0や1で埋められた配列はどうつくるの?
zeros
やones
や関数があるよ。
julia> zeros(3, 3) 3x3 Array{Float64,2}: 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 julia> zeros((3, 3)) 3x3 Array{Float64,2}: 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 julia> zeros(Int, 3, 3) 3x3 Array{Int64,2}: 0 0 0 0 0 0 0 0 0 julia> ones(3, 3) 3x3 Array{Float64,2}: 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0
scipy.sparse
みたいな疎行列が欲しいなぁ?
SparseMatrixCSC
があるよ!
spzeros
でゼロ初期化された疎行列を作れるよ。
試しに10,000 x 10,000行列を作ってみよう。
julia> x = spzeros(10000, 10000) 10000x10000 sparse matrix with 0 Float64 entries: julia> x[rand(1:10000, 3), rand(1:10000, 3)] = randn(9) 9-element Array{Float64,1}: 0.273565 0.982527 0.469546 -0.132561 0.49318 -0.59534 -0.403649 -0.748683 0.819549 julia> x 10000x10000 sparse matrix with 9 Float64 entries: [1564 , 858] = 0.819549 [4492 , 858] = -0.748683 [7057 , 858] = -0.403649 [1564 , 4839] = -0.59534 [4492 , 4839] = 0.49318 [7057 , 4839] = -0.132561 [1564 , 9154] = 0.469546 [4492 , 9154] = 0.982527 [7057 , 9154] = 0.273565
scipy.stats
でやるみたいに確率分布からサンプリングしたいんだけど?
Distributions.jlがあるよ。
線形方程式系が解きたいんだけど?
\\
という演算子があるよ。
例えば、Ax = yという方程式を解くなら以下の様な感じだよ。
julia> A = [1.0 2.0; 2.0 3.0] 2x2 Array{Float64,2}: 1.0 2.0 2.0 3.0 julia> y = [5.0, 8.0] 2-element Array{Float64,1}: 5.0 8.0 julia> A \ y 2-element Array{Float64,1}: 1.0 2.0
LU分解とかQR分解とかSVDとか固有値とか行列式とか...
ここを見て! http://julia.readthedocs.org/en/latest/stdlib/linalg/
言語機能
def
みたいな関数定義の方法は?
function ... end
で関数が定義できるよ。
例えばn
番目のフィボナッチ数の計算をするfib(n)
なら、
function fib(n) if n < 2 return 1 else return fib(n - 1) + fib(n - 2) end end
という感じ。ちなみにreturn
は省略可能なので省略されることも多いよ。
もう一つの記法として、
fib(n) = n < 2 ? 1 : fib(n - 1) + fib(n - 2)
というように一行で定義することもできるよ。
引数の型を制限するために、
function fib(n::Integer) # ... end
というように::<型>
を引数につけられるよ。
可変長引数は?
args...
というように仮引数に...
をつけると使えるよ。
function foo(x, y, zs...) println("x: $x") println("y: $y") println("zs: $zs") end
これを使ってみると、
julia> foo(1, 2) x: 1 y: 2 zs: () julia> foo(1, 2, 3) x: 1 y: 2 zs: (3,) julia> foo(1, 2, 3, 4) x: 1 y: 2 zs: (3,4) julia> foo(1, 2, 3, 4, 5) x: 1 y: 2 zs: (3,4,5)
と言ったかんじ。
可変長引数の展開も同じように...
をつけるんだよ。
julia> zs = [3, 4, 5] 3-element Array{Int64,1}: 3 4 5 julia> foo(1, 2, zs...) x: 1 y: 2 zs: (3,4,5)
オプション引数やキーワード引数は?
もちろん使えるよ!
オプション引数:
function foo(x, y=1, z=2) println("x: $x") println("y: $y") println("z: $z") end
使用例:
julia> foo(0) x: 0 y: 1 z: 2 julia> foo(0, 100) x: 0 y: 100 z: 2 julia> foo(0, 100, 200) x: 0 y: 100 z: 200
キーワード引数:
function foo(x; y=1, z=2) println("x: $x") println("y: $y") println("z: $z") end
使用例:
julia> foo(0, y=1, z=2) x: 0 y: 1 z: 2 julia> foo(0, z=1, y=2) x: 0 y: 2 z: 1
Pythonの変数スコープと違いはある?
簡潔に列挙していくと
- 関数定義がスコープをつくるのは同じ
- 現在のスコープでで変数が定義されてないときに外側に探しに行き、最終的にグローバルスコープに行くのも同じ
if
がスコープを作らないのも同じ- でも、Juliaの
for
やwhile
といったループがスコープをつくるのが違う - Juliaでは
try
もスコープをつくる - 内包表記で使われる変数はPython2と違ってその内包表記内のみのスコープになる(これはPython3と同じ)
for
を例に具体的動作の違いを見てみよう。
まずはPythonの動作の確認から。
In [1]: for i in xrange(10): ...: x = i ...: In [2]: x Out[2]: 9
このようにfor
文内で定義したx
にはfor
文を抜けた後もアクセスできるね。
これをJulia側で見てみると、
julia> for i in 0:9 x = i end julia> x ERROR: x not defined
というように、変数x
にはアクセスできなくなっているよ。
じゃぁJuliaで変数の値をループ内で設定したいときはどうするのさ
local
を使おう!
次のようにlocal x
と書くことでPythonと同様の動作を実現できるよ。
julia> function foo() local x for i in 0:9 x = i end x end foo (generic function with 1 method) julia> foo() 9
クラスを定義したいんだけど?
新しいデータ型を定義するには、type...end
とimmutable...end
の2つの定義の仕方があるよ。
例えば、
type Point x::Float64 y::Float64 end immutable IPoint x::Float64 y::Float64 end
のように同じように定義できて、immutable
の方はメンバーの変更ができないよ。
コンストラクタ(__init__
)はどうやって定義するの?
デフォルトのコンストラクタがあるから自分で定義しなくてもオブジェクトは作れるよ。
p1 = Point(1.2, 3.4) print(p1)
もちろん自分でも定義できるよ!
型名と同名の関数を以下のように定義して、内部でnew
を呼べばOKだよ。
type Point x::Float64 y::Float64 function Point(x, y) if x >= y error("x should be less than y") end new(x, y) end end
isinstance
関数に当たるのは?
isa
があるよ。
julia> isa(1, Int) true julia> isa(1, Integer) true julia> isa(1, Float64) false julia> isa("string", ASCIIString) true julia> isa("string", String) # v0.4からはAbstractString true
クラスの継承は?
できないよ。
ほんとに?
う〜ん。近しいものとしてnominal subtypingといって抽象型(abstract type)の下に具体型(concrete type)を定義して型の階層関係を定義できるよ。 注意しなければいけないのは具体型のsubtypeとして具体型を定義することはできない点だよ。
例えばこんな感じ:
abstract Person type Employer <: Person name::UTF8String age::Int end type Employee <: Person name::UTF8String age::Int salary::Int end
ちなみに<:
はある型が別の型のサブタイプかどうかを調べる演算子としても使えるよ。
次の例ではInt
, Int8
, Float64
が具体型でInteger
とFloatingPoint
が抽象型だよ。
julia> Int <: Integer true julia> Int8 <: Integer true julia> Float64 <: FloatingPoint true julia> Int <: FloatingPoint false
それって将来変わるの?
構造を継承するような変更は入らないと思うよ。
マニュアルから引用すると:
While this might at first seem unduly restrictive, it has many beneficial consequences with surprisingly few drawbacks. It turns out that being able to inherit behavior is much more important than being able to inherit structure, and inheriting both causes significant difficulties in traditional object-oriented languages.
さらにStefan Karpinski氏の言葉を引用すると:
There are never going to be classes in Julia in the C++/Java style. This is by design. Inheriting structure — i.e. tacking fields onto a composite object type — is rarely of much use and has huge downsides. There are two types of sharing that inheritance is suposed to be useful for: sharing structure and sharing behavior. If you want to share structure, delegation is a much better design than tacking extra fields onto a existing composite type. If you want to share behavior, then a better design is to write generic code to an abstract type (a.k.a. a trait in OO lingo) of which the concrete types are specific implementations. To those ends, we probably need some features to improve delegation support, as well as support for multiple inheritance from abstract types. Class-based OO, however, is definitely never going to happen.
https://groups.google.com/forum/#!msg/julia-dev/p9bV6rMSmvY/cExeSb-cMBYJ
つまり、型のメンバ(フィールド)を共有させるような機能よりは振る舞いを共有させるほうが重要だし、移譲を使えば別にフィールドを共有させる必要はないよねということだよ。
さっきの例なら:
type Person name::UTF8String age::Int end type Employer person::Person end type Employee person::Person salary::Int end
としてもいいよね。
文字列の長さを取得したいんだけど、len
みたいなのはあるの?
length
関数があるよ。
> length("foobar") 6 > length("日本語") 3
自分で定義した型にlen
を使いたいんだけど、__len__
みたいなメソッドはあるの?
自分で定義した型にlength
メソッドを定義してやるだけだよ。
やり方は簡単で、自分の定義した型Foo
に対してはlength(foo::Foo)
というメソッドを以下のように定義できるよ。
例えばA,C,G,Tの四文字だけを持つ文字列DNAString
を圧縮して効率的に保持することを考えると、以下のように定義できるよ。
type DNAString n::Int pack::Vector{Uint8} function DNAString(s::ASCIIString) ... end end function length(s::DNAString) s.n end
え、それはlength
以外でもできるの?
そう!それがJuliaの多重ディスパッチング(multiple dispatch)だよ!
「多重」ってのはどういうこと?
複数の引数があっても、その型の組み合わせで実際に呼び出されるメソッドが決まるということだよ。
それはどんなところで役に立つの?
例えばPythonでmodel.predict(data)
のように与えられたモデルでデータの予測をしようとしたときを考えてみよう。
ここで引数として与えられるdata
の型はlist
かもしれないし、NumPyのndarray
かもしれないとする。
Pythonだと
class SomeModel: ... def predict(self, data): if isinstance(data, list): self.predict_list(list) elif instance(data, np.ndarray): self.predict_array(data)
のようにSomeModel.predict
メソッド内で自分で分岐をするコードを書くことになっちゃうけど、Juliaだと
predict(model::SomeModel, data::List) ... end predict(model::SomeModel, data::Array) ... end
というようにメソッドの定義自体を分離して書けるんだ!
__getitem__
メソッドは?
getindex
があるよ。
他の特殊メソッドの対応関係は?
こんな感じかな?
Python | Julia | 備考 |
---|---|---|
__getitem__ |
getindex |
|
__setitem__ |
setindex! |
|
__delitem__ |
delete! |
|
__lt__ |
isless / < |
isless は全順序、< は半順序 |
__eq__ |
== /isequal |
浮動小数点数ではisequal と振る舞いが異なる |
__contains__ |
in |
|
__hash__ |
hash |
|
__call__ |
call |
v0.4から |
__str__ |
show |
|
__len__ |
length |
空のコンテナにFalse
を返すような__nonzero__
(__bool__
)を定義したいんだけど?
Juliaは割りと暗黙の意味みたいなのを嫌うのでそういうのはないよ。
bool
関数はあるけど数値のみに定義されていてPythonみたいに文字列などには定義されてないよ。
じゃぁどうするの?
isempty
とか明示的な関数を使おう!
JuliaでBool
値を返す関数はis___
という名前を持っていて、
ほかにもisnan
, isspace
, isalpha
, islower
, isupper
などたくさんあるよ!
イテレータを定義したいな
Juliaのイテレータはstart
, done
, next
の3つの関数からなるので、これを自分の定義した型にも定義してあげるといいよ。
start(iter) → state
で開始状態を設定しdone(iter,state) → Bool
で状態を受けてイテレーションが終了したか否かを返しnext(iter,state) → item,state
で要素と次の状態を返すんだ。
イテレータI
に対するfor文
for i in I # body end
は以下のものと等価になるんだ。
state = start(I) while !done(I, state) (i, state) = next(I, state) # body end
試しにTODOリストの未完了のタスクに対するイテレータを定義してみたよ。
type ToDoList{T<:String} tasks::Vector{T} finished::BitVector function ToDoList(tasks::Vector{T}) finished = BitVector(length(tasks)) finished[1:end] = false new(tasks, finished) end end Base.start(list::ToDoList) = 1 Base.done(list::ToDoList, state) = findnext(!list.finished, state) == 0 function Base.next(list::ToDoList, state) n = findnext(!list.finished, state) list.tasks[n], n + 1 end
ちょっと待って、今のtype ToDoList{T<:String}
って一体なに!?
型パラメータT
に制約をつけてるんだよ。
ここではT
がString
という抽象型(v0.4ではAbstractString
)のサブクラスであることを強制してるんだよ。
インスタンス化するときは、
julia> ToDoList{ASCIIString}(["foo"]) ToDoList{ASCIIString}(ASCIIString["foo"],Bool[false])
というように呼び出すんだよ。
@show x
とか@assert sum(x) == 10
みたいなのは何? デコレータ?
@
で始まるのはデコレータじゃなくてJuliaのマクロ呼出しだよ。これは実行前にJuliaのプログラムを書き換えることができるんだ。
デコレータは「関数を取って関数を返す関数」と考えられるけど、マクロは「式(expression)を取って式を返す関数」と考えられるよ。
モジュールってあるの?
Juliaもモジュール機能があるよ。
Pythonと違うのはPythonではファイルが自動的にモジュールになるのに対し、Juliaではmodule ... end
で挟んだところがモジュールになるよ。
例えば、
module Foo1 function foo() println("Foo1.foo") end end module Foo2 function foo() println("Foo2.foo") end end
という風にFoo1
・Foo2
の2つのモジュールを定義してfoos.jl
ファイルに保存して、
julia> include("foos.jl") julia> Foo1.foo() Foo1.foo julia> Foo2.foo() Foo2.foo
というようにしてそれぞれのfoo
関数を使えるよ。
ちなみにPythonと同じようにimport
がJuliaにもあるけど、暗黙的に名前を導入するusing
の方がよく使われるよ。
そうそう例外は?
一番手軽なのはerror
という関数があるよ。
julia> error("!!!") ERROR: !!! in error at error.jl:21
例外の種類としては、PythonのValueError
(不正な引数)に当たるDomainError
、IndexError
(存在しないキーへのアクセス)に当たるBoundsError
など色いろあるよ。
特定の例外を投げるにはthrow
関数(error
でもOK)を使ってね。
julia> throw(DomainError()) ERROR: DomainError julia> error(DomainError()) ERROR: DomainError in error at error.jl:19
もちろん例外を捕まえるためにtry ... catch ... finally ... end
というのもあるよ。
julia> try error("panic!") catch err println("something bad happened") println(err) finally println("and finally do something") end something bad happened ErrorException("panic!") and finally do something
文字列 / 正規表現
文字列の型は?
ASCIIString
とUTF8String
の2つがあるよ。
Python2系のstr
にあたるのがASCIIString
でunicode
にあたるのがUTF8String
だよ。
両方をまとめるString
(v0.4ではAbstractString
)というより上位の型もあるよ。
文字列は不変?
基本的にそうだよ。でも以下のように文字列だってJuliaで定義されていて、内部にさわろうと思えば触れちゃうけどいじっちゃダメだよ!
immutable ASCIIString <: DirectIndexString data::Array{UInt8,1} end immutable UTF8String <: AbstractString data::Array{UInt8,1} end
文字列の結合は?
*
をつかうよ。
julia> "foo" * "bar" "foobar"
文字列の配列を結合するにはjoin
を使うよ。
julia> join(["foo", "bar", "baz"], ',') "foo,bar,baz"
他にも色々比較や検索の関数があるよ!
.format
みたいな文字列のフォーマットは?
2つの方法があるよ。
- 変数の埋め込み
@sprintf
マクロ- Formatting.jlでPythonの記法を使う。
変数の埋め込みはPythonで言うところの"... {} ...".format(x)
に対応していて、文字幅などは指定せず単純に
変数を文字列に埋め込めるよ。
@sprintf
マクロはC言語のようなフォーマットの指定が可能だよ。
さらに、Formatting.jlのformat
でPythonの記法が使えるよ。
julia> n = 150; julia> "n is $n" "n is 150" julia> @sprintf "n is %05d" n "n is 00150" julia> format("n is {}", n) "n is 150" julia> format("n is {:05d}", n) "n is 00150"
複数行の文字列はどう書くの?
Pythonみたいに""" ... """
が使えるよ!
julia> x = """ foo bar """ julia> print(x) foo bar
Pythonと違うのはJuliaの""" ... """
では最初の改行文字が取り除かれるのに対し、Pythonでは除かれない点だよ。
つまり、
Julia:
""" foo bar """
と、
"""foo bar """
が同じ意味だよ。
正規表現はどう書くの?
例えば"090-1234-5678"みたいなのにマッチさせる正規表現ならr"\d{3}-\d{4}-\d{4}"
と書けるよ。
ちなみに使える正規表現はPerl Compatible Regular Expression (PCRE)だよ。
正規表現の文字列の前のr
は何? raw文字列?
実はこれもマクロだよ。
他にもv"1.2.3"
みたいなバージョン文字列のマクロやb"DATA\xff\u2200"
みたいなバイナリ列のマクロもあるよ。
マッチングはどうやるの?
ismatch
を使ってね:
julia> ismatch(r"\d{3}", "123") true julia> ismatch(r"\d{3}", "12") false
マッチした部分の抽出は?
()
によるグルーピングが使えるよ。
m = match(r"(\d{3})-(\d{4})-(\d{4})", "090-1234-5678") m.captures[1] m.captures[2] m.captures[3]
ファイル / IO
標準出力(sys.stdout
)と標準エラー(sys.stderr
)は?
STDOUT
とSTDERR
という変数が予め定義されているよ。
print(io, string)
で改行なし、println(io, string)
で改行付きで出力だよ。
標準入力から一行づつ読み込みたいんだけど?
readline
を使おう!
n = 1 for line in eachline(STDIN) print("$n: $line") n += 1 end
テキストファイルを一行づつ読み込みたいんだけど?
次のイディオムが使えるよ:
open("some.txt") do f for line in eachline(f) # do something end end
改行文字を取り除くには?
chomp
関数を使おう!
julia> chomp("foobar\n") "foobar"
書き込みは?
こんな感じだよ:
open("some.txt", "w") do f println(f, "the first line") println(f, "and more") end
socket
みたいなのは?
TCPソケットを通じてのデータのやり取りはlisten
, accept
, connect
があるよ。
システム
os.system
みたいに外部コマンドを実行したいんだけど。
バッククォート(\``)でコマンドを囲むと
Cmdオブジェクトができて、それを
run`関数で実行できるよ。
julia> `ls -la` `ls -la` julia> run(`ls -la`) total 1144 drwxr-xr-x+ 19 kenta staff 646 12 21 22:30 . drwxr-xr-x+ 30 kenta staff 1020 12 9 15:33 .. -rw-r-----@ 1 kenta staff 281892 12 5 01:02 6167c823c760479357b781d04c03b4a4.gif -rw-r--r--+ 1 kenta staff 412 12 21 22:03 bug.jl -rw-r--r--@ 1 kenta staff 176316 9 27 02:30 build_tree.png ...
subprocess.call
みたいにコマンドの出力を受け取りたいなぁ。
ファイルを開くのと同じopen
関数が実は使えるんだよ(ココ多重ディスパッチのいいところ!)。
コマンドの出力を一行づつ処理すのに便利だよ。
open(`command args`) do p for line in eachline(p) # do something end end
ファイルを開く時とそっくりだね!(再掲)
open("some.txt") do f for line in eachline(f) # do something end end
現在のディレクトリの取得は?
pwd
関数を使おう!
ディレクトリの移動は?
cd
関数を使おう!
次のようにdo ... end
を使って一時的にディレクトリの移動も出来るよ!
julia> println(pwd()) /Users/kenta/snippets/JuliaAdvent julia> cd("/tmp") do println(pwd()) end /private/tmp julia> println(pwd()) /Users/kenta/snippets/JuliaAdvent
プロファイリング / ベンチマーク / テスト
timeit
みたいに手軽に関数の実行時間を知りたいんだけど
@time
マクロは与えられた式を実行して、実行時間と割り当てられたメモリの量を教えてくれるよ。
julia> @time sum([1:1000000]) elapsed time: 0.005030125 seconds (8000168 bytes allocated) 500000500000
コードの何処に時間がかかってるか知りたいんだけど?
@profile
マクロを使おう。
たとえばこんな関数とすると:
function func(n) m = 2^n s = BigInt(0) for i in 1:m s += sum(1:i) end s end
結果を見るには以下のようにするよ:
julia> Profile.clear() julia> @profile func(20) 192154133857304576 julia> Profile.print() 1 ./base.jl; finalizer; line: 147 1 ./bool.jl; !; line: 17 1 gmp.jl; +; line: 267 476 task.jl; anonymous; line: 96 476 REPL.jl; eval_user_input; line: 54 476 profile.jl; anonymous; line: 14 476 none; func; line: 5 389 gmp.jl; +; line: 267 300 ...lib/julia/sys.dylib; finalizer; (unknown line) 2 ./base.jl; finalizer; line: 0 91 ./base.jl; finalizer; line: 144 205 ./base.jl; finalizer; line: 147 72 gmp.jl; +; line: 268 4 gmp.jl; +; line: 269 3 range.jl; sum; line: 542
Juliaのプロファイラは実行途中にスタックのスナップショットを取って、何処に時間がかかってるかを割り出せるようになってるよ。左の数字が大きいところがコストのかかっている処理だよ。
gmp.jlのfinalizer
でたくさんの時間がかかってる事がわかるね!
なんか数値計算で思ったよりパフォーマンスが上がらないんだけど...
数値計算などでC言語などに大きく水をあけられるケースの原因はいろいろ考えられるけど、よくあるのが変数の型が安定してないケースだよ。
次の配列xs
の数値の総和を計算するケースを考えてみよう。
function mysum(xs) s = 0 for x in xs s += x end s end
一見問題なさそうに思えるけど、実はxs
の要素の型によってパフォーマンスがかなり変わってしまう問題があるコードだ。
数字の1を10,000,000個持った配列の和を求める下のベンチマークを見ると要素がInt
の時に比べてFloat64
のときにおよそ40倍も時間がかかっていることが分かるね。
mysum, Int
elapsed time: 0.010568369 seconds (16 bytes allocated)
mysum, Float64
elapsed time: 0.425763243 seconds (320000000 bytes allocated)
これの原因は変数s
にあって、与えられた配列xs
の要素がInt
型の時はs
の型は常にInt
だけども、xs
の要素がFloat64
の時には
最初はs
の型が= 0
でInt
に設定されるのに後でs += x
としたときにInt + Float64 → Float64
に変わってしまうのが問題なんだ。
これをチェックすのにはcode_typed(f,types)
関数(もしくはマクロ版の@code_typed
マクロ)を使ってみよう。
例えばxs
がVector{Int}
のとき、s
は::Int64
で型付けされているけど、
julia> code_typed(mysum, (Vector{Int},)) 1-element Array{Any,1}: :($(Expr(:lambda, {:xs}, {{:s,symbol("#s119"),symbol("#s118"),:x,:_var1,:_var2,:_var0,:_var3},{{:xs,Array{Int64,1},0},{:s,Int64,2},{symbol("#s119"),Int64,2},{symbol("#s118"),(Int64,Int64),18},{:x,Int64,18},{:_var1,Int64,18},{:_var2,Int64,18},{:_var0,Int64,18},{:_var3,Int64,18}},{}}, :(begin # none, line 2: s = 0 # line 3: #s119 = 1 _var1 = (top(arraylen))(xs::Array{Int64,1})::Int64 unless (top(box))(Bool,(top(not_int))((top(slt_int))(_var1::Int64,#s119::Int64)::Bool))::Bool goto 1 2: _var0 = (top(arrayref))(xs::Array{Int64,1},#s119::Int64)::Int64 _var3 = (top(box))(Int64,(top(add_int))(#s119::Int64,1))::Int64 x = _var0::Int64 #s119 = _var3::Int64 # line 4: s = (top(box))(Int64,(top(add_int))(s::Int64,x::Int64))::Int64 3: _var2 = (top(arraylen))(xs::Array{Int64,1})::Int64 unless (top(box))(Bool,(top(not_int))((top(box))(Bool,(top(not_int))((top(slt_int))(_var2::Int64,#s119::Int64)::Bool))::Bool))::Bool goto 2 1: 0: # line 6: return s::Int64 end::Int64))))
xs
がVector{Float64}
のとき、s
は::Union(Int64,Float64)
で型付けされていて型が安定していないことが分かるね。
julia> code_typed(mysum, (Vector{Float64},)) 1-element Array{Any,1}: :($(Expr(:lambda, {:xs}, {{:s,symbol("#s119"),symbol("#s118"),:x,:_var1,:_var2,:_var0,:_var3},{{:xs,Array{Float64,1},0},{:s,Any,2},{symbol("#s119"),Int64,2},{symbol("#s118"),(Float64,Int64),18},{:x,Float64,18},{:_var1,Int64,18},{:_var2,Int64,18},{:_var0,Float64,18},{:_var3,Int64,18}},{}}, :(begin # none, line 2: s = 0 # line 3: #s119 = 1 _var1 = (top(arraylen))(xs::Array{Float64,1})::Int64 unless (top(box))(Bool,(top(not_int))((top(slt_int))(_var1::Int64,#s119::Int64)::Bool))::Bool goto 1 2: _var0 = (top(arrayref))(xs::Array{Float64,1},#s119::Int64)::Float64 _var3 = (top(box))(Int64,(top(add_int))(#s119::Int64,1))::Int64 x = _var0::Float64 #s119 = _var3::Int64 # line 4: s = s::Union(Int64,Float64) + x::Float64::Float64 3: _var2 = (top(arraylen))(xs::Array{Float64,1})::Int64 unless (top(box))(Bool,(top(not_int))((top(box))(Bool,(top(not_int))((top(slt_int))(_var2::Int64,#s119::Int64)::Bool))::Bool))::Bool goto 2 1: 0: # line 6: return s::Union(Int64,Float64) end::Union(Int64,Float64)))))
これを防ぐにはs
の型をxs
の要素から直接得ればいいんだ。
function mysum_ok(xs) s = zero(eltype(xs)) for x in xs s += x end s end
code_typed
で確認してみると、Float64
のときはs
が::Float64
で安定的に型付けされているのが分かるね。
julia> code_typed(mysum_ok, (Vector{Float64},)) 1-element Array{Any,1}: :($(Expr(:lambda, {:xs}, {{:s,symbol("#s119"),symbol("#s118"),:x,:_var1,:_var2,:_var0,:_var3},{{:xs,Array{Float64,1},0},{:s,Float64,2},{symbol("#s119"),Int64,2},{symbol("#s118"),(Float64,Int64),18},{:x,Float64,18},{:_var1,Int64,18},{:_var2,Int64,18},{:_var0,Float64,18},{:_var3,Int64,18}},{}}, :(begin # none, line 2: s = (top(box))(Float64,(top(sitofp))(Float64,0))::Float64 # line 3: #s119 = 1 _var1 = (top(arraylen))(xs::Array{Float64,1})::Int64 unless (top(box))(Bool,(top(not_int))((top(slt_int))(_var1::Int64,#s119::Int64)::Bool))::Bool goto 1 2: _var0 = (top(arrayref))(xs::Array{Float64,1},#s119::Int64)::Float64 _var3 = (top(box))(Int64,(top(add_int))(#s119::Int64,1))::Int64 x = _var0::Float64 #s119 = _var3::Int64 # line 4: s = (top(box))(Float64,(top(add_float))(s::Float64,x::Float64))::Float64 3: _var2 = (top(arraylen))(xs::Array{Float64,1})::Int64 unless (top(box))(Bool,(top(not_int))((top(box))(Bool,(top(not_int))((top(slt_int))(_var2::Int64,#s119::Int64)::Bool))::Bool))::Bool goto 2 1: 0: # line 6: return s::Float64 end::Float64))))
これでFloat64
の時のパフォーマンスはぐっと良くなるよ。
mysum_ok, Int
elapsed time: 0.00833662 seconds (16 bytes allocated)
mysum_ok, Float64
elapsed time: 0.01434145 seconds (16 bytes allocated)
もちろん本当は色々工夫されている標準のsum
を使ったほうがいいよ。
ベンチマークのコード全体は以下のとおりだよ。
function mysum(xs) s = 0 for x in xs s += x end s end function mysum_ok(xs) s = zero(eltype(xs)) for x in xs s += x end s end function bench(func::Function, eltype::DataType) # pre-compile func([one(eltype)]) xs = ones(eltype, 10_000_000) gc_disable() @time func(xs) gc_enable() gc() end let println("mysum, Int") bench(mysum, Int) println("mysum, Float64") bench(mysum, Float64) println("mysum_ok, Int") bench(mysum_ok, Int) println("mysum_ok, Float64") bench(mysum_ok, Float64) println("Base.sum, Int") bench(Base.sum, Int) println("Base.sum, Float64") bench(Base.sum, Float64) end
結果はこんなかんじ。
mysum, Int
elapsed time: 0.010568369 seconds (16 bytes allocated)
mysum, Float64
elapsed time: 0.425763243 seconds (320000000 bytes allocated)
mysum_ok, Int
elapsed time: 0.00833662 seconds (16 bytes allocated)
mysum_ok, Float64
elapsed time: 0.01434145 seconds (16 bytes allocated)
Base.sum, Int
elapsed time: 0.006605981 seconds (16 bytes allocated)
Base.sum, Float64
elapsed time: 0.006086415 seconds (16 bytes allocated)
そうそう単体テストは?
標準ライブラリにあるBase.Test
を使うよ。
@test
マクロがtrue
になるような式を渡してね。
julia> using Base.Test julia> @test 1 == 1 julia> @test 1 == 2 ERROR: test failed: 1 == 2 in error at error.jl:21 in default_handler at test.jl:19 in do_test at test.jl:39
他に例外を投げることを確認する@test_throws
と、浮動小数点数がほぼ同じ値であることを確認する@test_approx_eq
もあるよ。
ライブラリ
requestsみたいなのは?
Requests.jlが近いかな!
YAMLやJSONやXMLは?
pandasみたいなデータフレームは?
DataFrames.jlがあるよ!
プロットしたいんだけど?
一番使われてるのはGadfly.jlかな。 チョット動作が遅いけど簡単によくあるプロットができるよ。
Pythonistaの人にはMatplotlibをJuliaでラップしたPyPlot.jlがあるよ。
IPython Notebookは?
IJulia.jlがあるよ!
最近はJupyterも注目だね! もちろんJupyterのJuはJuliaのJuだよ!
コマンドライン引数のパースするには?
オススメはPythonのdocoptから移植されたDocOpt.jlだよ!。 詳しくはPythonのコマンドライン引数処理の決定版 docopt (あとJuliaに移植したよ)を見てね。 他にもArgParse.jlというのもあるよ。
Flake8みたいな静的なコードのチェッカーが欲しいんだけどなぁ
JuliaにはPEP8に相当するものは今のところないからスタイルに関してはかなり自由だけど、 List.jlでよくある間違いを事前に発見できるよ。
統計とか機械学習とかのライブラリが知りたい!
思いつく限り!
- GLM.jl - 一般化線形モデルのライブラリ
- GLMNet.jl - LassoとElastic Netのライブラリ
- HypothesisTests.jl - 統計的仮説検定のライブラリ
- PValueAdjust.jl - p値の補正ライブラリ
- StatsBase.jl - 統計関係の便利ライブラリ
- Distances.jl - 様々な距離を測るライブラリ
- KernelDensity.jl - カーネル密度推定のライブラリ
- SVM.jl - SVMのライブラリ(純Julia製)
- LIBSVM.jl - SVMのライブラリ(libsvmのバインディング)
- DecisionTree.jl - 決定木とRandom Forestのライブラリ(ID3)
- RandomForests.jl - Random Forestのライブラリ(CART 俺製)
- Lora.jl - MCMCのライブラリ(元MCMC.jl)
- Mamba.jl - MCMCのライブラリ
- FANN.jl - Neural Networkのライブラリ
- Mocha.jl - Deep Learningのライブラリ
- MLBase.jl - 機械学習関係の便利ライブラリ
- NMF.jl - non-negative matrix factorizationのライブラリ
他にもJuliaStatsに色いろあるよ!
もっと資料や読み物を教えて!
言語をよく知りたいならJuliaの公式マニュアルを読もう!質も量も素晴らしいマニュアルだよ!
- Julia Documentation
- 公式マニュアル
- The Standard Library
- Juliaの標準ライブラリ(必須レファレンス)
他にも、Worth Readingな記事を挙げていくよ!
- Out in the Open: Man Creates One Programming Language to Rule Them All
- WIREDの記事。なぜJuliaなんて言語を作ったのかという話
- Tricks in Julia
- Juliaの小技集
- The Relationship between Vectorized and Devectorized Code
- JuliaとRのベクトル化の考え方の違い
- Fast Numeric Computation in Julia
- Juliaで高速な数値計算を行うときのコツ
- Vectorization in Julia
- NumericExtensions.jl / NumericFuns.jl
- 夜道さんの記事。パッケージを使った数値計算の高速化手法
- Performance Tips
- Juliaマニュアルのパフォーマンスを上げるTips